オファ・アトゥ

4月1日に付き合い始め、4月1日に入籍した妻、広恵さんと1泊2日で河津温泉へ。

広恵さんが会社のビンゴ大会で入手した宿泊券は幾つかの宿泊先を選べて、ホームページで検索した中で一際異彩を放っていた宿の名前は『ギャラリーコート オファ・アトゥ』。『オファ・アトゥ』とはトンガ語で『With Love』と言う意味を持つらしい。

僕たちはその宿に足を運びました。

海とヨットを描いた画家、トンガに移住し10ヶ月、その後河津に移住、永眠。その名は柏村勲氏。彼の絵に囲まれた宿はとっても変で、とっても素敵な場所でした。

ロビーには団らんのスペースが広くとられ、どなたでもここでのびやかに歓談して欲しいという気持ちを、僕は勝手に感じました。創設者亡き後も意思を引き継いだ方がいるのだろうと。

毎年4月1日をそこで迎えるという、どこか不思議で印象深い瞳の輝きを持ったご家族とロビーでお酒を呑みながら色々な話しをし、縁の不思議さをしみじみ感じました。

『オファ・アトゥ』、『With Love』
一つ一つ思い出が増え、時間は過ぎる。
グラスを片手に、会話が生まれては消える。

開高健が書いた小説の題名が頭をよぎります。

『地球はグラスのふちを回る』

中島らもの書いた小説の題名も頭をよぎります。

『今夜全てのバーで』

沈黙も含めて、グラスを持ちながらの会話っていいものだ、と思います。

そして、僕はこの時間が終わってほしくない、時よ止まれ汝は美しいなどと思いながら、気付いたら二日酔いを迎えるのです。
(駄目なオチ、いつものパターン、何を格好つけて言っているのだ笑)

片野 匡博 オファ・アトゥ